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【副詞】「tout juste」を使いこなす!【初級〜中級】

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tout juste」を使いこなす!


ここでの「tout」は、副詞justeを強調する副詞です(副詞は動詞だけでなく、副詞も修飾します)。そして「juste」のコアイメージは〈ぴったりと重なり合う〉です。

基本的には「exactement」と同じですが、「tout juste」の使われる状況には大きくわけて三つあります。ここでは、その「tout juste」の三つのパターンを見ていきましょう。

パターン1 tout juste=数がぴったり!

ひとつめは、〈数のぴったり〉です。日本語の「ぴったり」は、少し口語的ですね。文章でも使われる言葉としては、「ちょうど」「まさに」にあたります。いちばん多いのは、時間にかんする表現でしょうか。

  Je viens (tout) juste de revoir mon ex-épouse.(前の妻にさっき会ってきたばかりなんだ)

  il y a tout juste un an…(ちょうど1年前に…)

THE・虎舞竜の「ロード」の歌い出しですね。どうでもいいですが。

パターン2 tout juste=相手の発言がぴったり!

ふたつめは、〈発言のぴったり〉。この場合、日本語の「ちょうど」は使えませんが、「まさに」は使えます。「そう(oui)」、「その通り(exactement)」という意味ですね。

     Tout juste, Auguste !(まさに!)

この場合の「Auguste」は、単なる語呂合わせで、オーギュストという人に呼びかけているわけではありません。意味は違いますが、「当たり前田のクラッカー!」みたいな感じでしょうか。かなり、古臭いギャグですが。

  トゥ・ジュスト、オーギュスト!

なんていう表現を使ってみると、よくそんなの知ってるねえ、とフランス人には驚かれるかもしれませんね。ご自分の鉄板ネタにどうぞ。

もちろん、「(Tout) juste」だけでも使うことができます。

パターン3 tout juste=ほんのわずか

みっつめは、中級編になります。じつは、「tout juste」には、「ほとんど…ない(presque pas)」「かろうじて…(à peine)」の意味があります。

「まさに」の対象が、わずかなものである場合には、「ほんの」「せいぜい」「たかが」「ぎりぎり」のような主観的な日本語を選ぶと、うまくいきますよ。

   Ils se sont mariés, il y a tout juste un an.(ふたりが結婚したのは、ほんの1年前のことだ)

最初に見たのと同じフランス語ですが、文脈によっては「ほんの」「つい」と訳したほうが、正確です。では、次のようなケースではどうでしょう。

   des résultats tout juste moyen(かろうじて平均的な成績)

 日本語は「せいぜい」「かろうじて」くらいがよいでしょう。うーん、こうすると、もはや日本語の機微がわからなくなってきますね。ちょっと、日本語のほうから考えてみましょう。

「まさに」「ちょうど」「ほんの」…の使い分け?!

これらの言葉は、こんなふうに整理できるのはないでしょうか。

・「まさに」=〈ぴったり〉であること

・「ちょうど」=〈ぴったり〉であること

・「ほんの」=〈とるにたらないもの・量だ〉という価値の提示

・「たかが」=〈とるにたらないものだ〉という価値の提示

・「つい」=「時間・距離・数」が「わずか」であること

・「かろうじて」=「難しいこと」を「ぎりぎり」で実現すること

・「せいぜい」=〈多く見積もっても、とるにたらないもの・量だ〉という価値の提示

・「ぎりぎり」=「余裕」がない状態

フランス語の「juste」と比べると、「まさに」「ちょうど」以外の日本語は、話し手の価値判断を含んでいるわけですが、副詞のtoutには、このように話し手の気持ちをにじませる力があるということです。

逆にいうと、「まさに」「ちょうど」を強調することで、主観をあらわすような副詞が、日本語には見当たらないともいえますね。 

ちょっとイディオムっぽい表現で、文頭におかれると倒置されたり、うしろに「si…」が出てきたります。

Je suis prête : c’est tout juste s‘il me reste à fermer les fenêtres !(準備できたよ、あとは窓を閉めればオッケー!)

実践編!

それでは、つぎの新聞の見出しはどんな意味になるでしょうか?

LeDevoir紙のホームページより(2020年11月16日)

市民の声により、ペルーの大統領がたった5日で辞任してしまった、というニュースの見出しです。ここでの「tout juste」は、「権力の座についてすぐ」という意味合いで、「たった5日で」という内容の言い換えになっている部分ですね。「par intérim」は「臨時の」「代行の」という意味の形容詞句。「démissionner」は、「仕事をやめる」という意味の動詞です。

  Tout juste arrivé au pouvoir, le président par intérim du Pérou démissionne.(権力の座についてすぐ、ペルーの臨時大統領は辞職となった)

まとめ

 みなさん、フランス語の「tout juste」のポイントはつかめましたでしょうか? 最初は「exatement」の言い換えとして、使ってみるだけでもいいと思いますが、場合によっては「ほんのわずか」「〜しさえすればよい」という、とても限定的なニュアンスを出す言葉でもあります。

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