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【文法】代名動詞ってなに?【初級〜中級】

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【文法】代名動詞ってなに?【初級〜中級】


ボンジュール、たじまです。

今日は「代名動詞」についてお話しますよ。

「フランス語の動詞」は、そのほとんどが「代名動詞」として使うことができます。代名動詞をもたない動詞は、少数派。このページでは、初級文法でつまづきやすい「代名動詞」について、わかりやすく解説をしていきます。

「代名動詞」でつまづく理由の一つは、おそらくですが、中学高校習った英語にはそのようなものがなからです。なんだかんだでフランス語文法は、英文法と似ている部分もあるので、そこで習っていない文法用語が出てきてしまうと、「む、むずかしい…」と思ってしまうのではないでしょうか。

そもそも、代名動詞(verbes pronominaux)ってなに??

「代名動詞」とは、「代名詞(pronom)」とセットになった動詞(verbe)です。代名詞というのは、jeやilなど、主語をはじめとしていくつかありますが、ここでの中心は「目的語の代名詞」です。つまり、「目的語の代名詞」がセットになっている動詞、それが「代名動詞」です。

まず、フランス語で避けて通れないのは、つぎの表現ですね。

  Comment tu t’appelles ?/Comment vous vous appelez ?
  ――Je m’appelle

これらの動詞の原形は、「s’appeler」なのですが、辞書で「Sa…」を引いても出てきません。この動詞は「appeler(呼ぶ)」の代名動詞なので、「Ap…」のところをまず引きます。すると、「appeler」の項目の後半に、かならず「s’appeler」が出てきます。

「appeler」は他動詞です。つまり、「呼ぶ」という力を「自分ではない誰か」に働きかけるという構図です。つまり、「私」がいて「誰か」がいて、そのあいだを「動詞」がつないでくれるという関係性です。

一方で「s’appeler」は、「呼ぶ」という力を「自分」に向けます。自分で自分のことを呼ぶ、そこから「自分は〜と呼ばれている」「〜という名前です」という意味が出てきます。それだけではありません。「お互いに呼び合う」という意味も「s’appeler」には出てきます。

このように、代名動詞を理解するために、おさえておかなければならないのは、フランス語の基本構文は「SVO」であるということです。これは英語と同じですね。つまり、「主語が目的語に対して何らかの「操作」を加えるという図式」が基本になっているということです。

  fermer-la porte(ドアを閉める)
  regarder-la télé(テレビを見る)
  donner-un cadeau(贈り物をあげる)
  boire-une bière(ビールを飲む)

「もの=objet」に囲まれているわたしたちは、このように自分以外の「もの」に(そして人に)「力」をはたらきかけて、生活しています。しかし、「顔を洗う」というように、SVOの図式に当てはまらない場合は、どうなるのでしょうか? それが代名動詞(se…….er)の出番であるというわけです!

大事なこととして、SVOのパターンに当てはまらないケースは、大きくわけて4パターンあります(フランス人もそのように習います)。それは次の4つです。

以下では順番に①〜④について説明していきますが、まずはその前に基本的な代名動詞と、その活用について見ておきましょう。

代名動詞の活用の基本!

代表的な代名動詞は、以下のとおりです。

se réveiller(目覚める) se lever(起きる) se laver(洗う) se doucher(シャワーを浴びる)se coucher(寝る)s’habiller(服を着る) se maquiller(化粧をする) se promener(散歩をする)s’asseoir(座る) se marier(結婚する)se souvenir(思い出される)se servir(使われる)など…

最初に書いたように、フランス語の動詞のほとんどには、通常の(他)動詞と、代名動詞がセットになっています。したがって、「代名動詞」という特殊な動詞を覚えるのではなく、「通常の(他)動詞」と「代名動詞」をどのように使い分けるのか、どのように違うのか、を考えることが理解のための最短の道になります。

このうち、se leverとse promenerを例にとって、現在形と複合過去形をいっぺんに見ておきましょう。

とまあ、こんな感じになります。細かいことは、また別の記事をそのうち書くつもりですが、いちばんのポイントは「目的語の代名詞」(主語と動詞のあいだにはさまれる)が「主語」と連動して変化するということ、そして複合過去のときには、êtreを助動詞として用いるということです。その他も少し細かなルールがありますが、それは後回しにしておきましょう。

基本的には、直接目的語の代名詞と同じなのですが、三人称のときだけ「se」を使います。なぜなら、ここで「le」や「la」を使ってしまえば、他動詞として読まざるをえなくなってしまうからです。

  Il le lève à 7 h du matin. (彼は、朝7時に彼を起こす)

   Il se lève à 7h du matin. (彼は、朝7時に起きる)

上の例文で主語の「Il」と目的語の「le」は別人です。「男A」が「男B」を起こしてあげているという構図です。「彼」が自分で起きる場合には、そんなわけで「le」や「la」は使えないので、「se」という代名詞を使うことになるというわけなのです。この「se」は、(三人称の)代名動詞専用の代名詞で、ほかには出てきません

①再帰的用法…「S=O」である場合

繰り返し書いていますが、フランス語の動詞のほとんどには、通常の(他)動詞と、代名動詞がセットになっています。ここでは「promener」をみていきましょう。

上の絵では公園で散歩をしている人たちがいます。手前のベビーカーに乗っている子供は、まだ自分の足で歩くことができません。パパとママが、その子供に「promener」という力を与えてあげています。

 ・Des jeunes parents promènent leur bébé.(若い夫婦がこどもを散歩させている

ここでの主語=動作主体(sujet)つまり、「前に進める(promener)」という力をはたらきかけているのは、パパとママのほう(Des jeunes parents)です。そして、その力を受けているのが、子供のほう(leur bébé)です。これがフランス語の基本となっているSVOのかたちです。「名詞・動詞・名詞」のリズムです。

しかし、奥のおじいちゃんは、ひとりで散歩をしています。

  ・Un vieux monsieur se promène tout seul.(おじいちゃんがひとりで散歩している

この場合は、上の「力を与える」という関係性を基本に考えると、動作主体(sujet)と、その力を受ける相手=目的語(objet)が、一致しています。このように「力」がブーメランのように戻ってくるので、「再帰的(réfléchis)」な動詞とフランス語では呼んでいます。

難しい言葉は覚える必要がないので、「自分が自分に何かをする」ときには、代名動詞を使う!と、シンプルに覚えてください。他動詞に対する自動詞、と考えてもらってもいいと思います。代名動詞のなかでは、もっとも一般的な用法でもあります。

たとえば、「lever」は(何かを)「起こす=持ち上げる」という動詞なのですが、これが代名動詞で使われると「自分を持ち上げる=起きる」となります。同様に、「coucher」は(何か・誰かを)「寝かせる」という動詞なのですが、これが「se coucher」となると「寝る」という意味になります。

では、「歯をみがく」「手を洗う」のような場合は、どうすればいいのでしょうか? その場合は、代名動詞を使いつつ、目的語(ここでは体の一部)を通常通り、動詞のうしろがわにおきます。

  Je me brosse les dents.(わたしは歯を磨く)
  Elle se lave les mains.(彼女は手を洗う)

このような用法では、複合過去にするときに、性数一致の注意点がありますので、これも別の記事で近々ご紹介します。

*このタイプの代表的な代名動詞

se réveiller(目覚める)se lever(起きる)se coucher(寝る)s’allonger(横になる)se reposer(休む)se doucher(シャワーを浴びる)se laver(洗う)se baigner(風呂に入る)s’habiller(服を着る)se brosser(磨く)se raser(髭を剃る)se dépêcher(急ぐ)se promener(散歩をする)s’asseoir(座る)s’appeler(呼ばれている)se rappeler(覚えている)se tromper(間違う)s’intéresser à…(〜に興味を抱く)s’ennuyer(退屈する)s’amuser(楽しむ)se sentir(感じられる)s’inquiéter(不安に感じる)などなど

②相互的用法…S⇔Oである場合

これもよく使いますね。英語では「お互いに」というとeach otherをすぐに使ってしまいますが、フランス語では代名動詞が多くの場合、それをカバーしてくれます。日本語の「〜しあう」に近い感覚です。

動作の「力」がブーメランのように自分に戻ってくるのは①と同じですが、何度も往復するのが、この②です。しかし、基本的なことは何も変わりません。

  ・ Un vieil homme lance une balle à son chien.(老人が犬にボールを投げている

これも基本のSVOの構図ですね。老人が「ボール」というもの(objet)を投げている。しかし、英語とちがってフランス語にはSVOOという構文が存在しないので、ボールを投げる相手(ふたつめのobjet)には、かならず「à」をつけなければなりません。

  ・Deux garçons se lancent un ballon.(ふたりの少年がボールを投げ合っている

それでは、動詞のうしろに目的語がくるかどうかが、①の違いなの?と思われるかもしれませんが、そうではありません。「もの」が不要な動作であれば、動詞だけで完結する文章はいくらでもあります。

  ・Jean et Charlotte s’aiment bien.(ジャンとシャルロットは愛し合っている)

*このタイプの代表的な代名動詞

se rencontrer(出会う)s’écrire(手紙のやりとりをする)se téléphoner(電話をしあう)s’entendre(理解し合う)se ressembler(似ている)s’aider(助け合う)se disputer(ケンカをする)se lancer(投げ合う)se parler(話し合う)se regarder(見つめ合う)s’embrasser(キスをし合う)s’aimer(愛し合う)se bagarrer(殴り合う)se séparer(別れる)など

③受動的用法…S←(O)である場合

これは①②とはちがって、「自分=主語以外」から動作が飛んでくる場合です。ブーメランではなく、一方的です。日本語では「〜される」という言葉に相当します。もちろん、フランス語にも「受動態」はあるのですが、動作主を示す必要がない場合は、たいがい代名動詞を使って言えてしまいます。

最初はよくわからない〜と思っていたかもしれませんが、だんだん、この用法が合理的に見えてきませんか?

  ・Ce mot ne s’emploie plus.(この言葉はもう使われていません)

      ・Le champagne se sert bien frais.(シャンパンはよく冷やしてサーブされます)

      ・Ce livre se vend comme des petits pains.(この本は山のように売られている)

ポイントとして、主語=主題(sujet)は「もの」です。「人」ではありません。「人」は隠された動作主体として、文章の外側に置かれています。

*このタイプの代表的な代名動詞

s’employer(使われている)se servir(使われている)se vendre(売られている)se prononcer(発音される)se dire(言われている)s’écrire(書かれている)se trouver(見つかる=ある)se voir(見られる)se situer(位置づけけられる)se préparer(準備される)などなど

④本質的用法…S→(O)である場合

いよいよ、最後の四つ目になりました。

よくわからない名前がついていますが、一言で言えば、これは「代名動詞」しかもたない動詞、です。ほとんどの動詞は、元になる他動詞をもっているのですが、これだけは例外! 辞書でも「S’…」から引かなければいけません。

  ・L’oiseau s’envole.(鳥が飛び立つ)

この「本質的用法」は、自分の意志で何かをするという動詞が多いです。「飛ばせる」というのは、「散歩させる」とちがって、なかなか難しいですよね。なので、ペアになる他動詞がなくても、まったく不自然ではないわけです。

*このタイプの代表的な代名動詞

s’évanouir(気を失う) s’envoler(飛び立つ) s’enfuir(逃げ去る)s’empresser de…(急いで〜する)s’absenter de…(〜を離れる・休む)s’abstenir de…(〜を差し控える・やめておく)se souvenir de…(〜を思い出す)s’apercevoir de…(〜に気づく)s’emparer de…(〜を横取りする・独占する)se repartir de…(〜を後悔する)se moquer de…(〜をバカにする)se fier à…(〜を信用する)se méfier de…(〜を信用しない)など

あと、数はそれほど多くはありませんが、ペアとなる他動詞をもっているケースでも、「自分の意志」で何かをするときに、①〜③には該当しない意味が出てくることがあります。よく使われるのは、「s’en aller(行く・立ち去る)」「se mettre à…(〜しはじめる)」「s’occuper de…(〜に専念する)」などですね。

  ・Va-t’en !(どっか行けよ!)
  ・Il se met à pleuvoir.(雨がふりはじめたね)
  ・Je m’occupe des enfants toute la journée.(一日中、子供たちの相手をしています)
  ・Vous vous souvenez bien de cette soirée ?(このパーティのことをよく覚えていますか?)
  ・Ma femme se moque toujours de moi.(うちの妻はわたしのことをいつも馬鹿にする)

このへんは、代名動詞をつかった熟語表現と覚えてもよいのですが、④のような「意志」をコアにもっていると考えるといいと思います。

まとめ

このページでは、「代名動詞」の基本パターンについてみてきました。代名動詞は活用に慣れるのと、複合過去のときに少し文法的なポイントがありますので、あらかた概要を掴めたという方は、ぜひそちらに進んでみてください!

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