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【文法】接続法ってなに?【初級〜中級】

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【文法】接続法ってなに?【初級〜中級】


「フランス語の動詞」は、主語・時制・法のみっつのバロメータで変化(活用)はします。このなかで、日本人にとってもっともわかりにくいのは、みっつめの「法」です。

そもそも、法(mode)ってなに??

「法(mode)」というのは、「話し手がどんなふうに〈出来事の現実度〉を考えているか?」ということです。話し手のモード、つまり態度のことですね。

ニュースのように「客観的な事実」として、つまり〈出来事の現実度〉を100パーセントと考えている場合、これは「直説法」と呼ばれるかたちになります。日常でもっとも使うのは、これですね。

〈出来事の現実度〉を100パーセントに「したい」場合、これは「命令法」となります。これは原則として(être, avoir, savoir, vouloirの四つをのぞいて)「直説法」と同じになります。

〈出来事の現実度〉がかなり低い場合で、命令してどうにかなるものでもない場合、これは「条件法」となります。まだ確定していないニュース報道、あるいは無理な仮定、あるいは「もし可能だったら」と丁寧にお願いする場合なんかに使われるかたちです。

そして最後の「接続法」ですが、これは〈出来事〉がまだ完全な事実になりきれていない場合、つまりまだ話し手の「あたまのなかの世界」にとどまっている場合、です。

que以下=話し手の「あたまのなかの世界」

何よりも大事なことは、「接続法」は主節には使われず、従属節(つまりque以下)のなかの動詞にしか使われないということです。接続詞que以下でしか使われないかたちなので、接続法と呼ばれているのです。

例外がないわけではありません。

  Vive la France ! Vive la République !(フランス万歳! 共和国万歳!)

ここにはqueが登場しません。が、ご想像の通り、これは「フランスが存続することを願う」という意味内容ですから、もともとは「Je souhaite que la France vive !」のようなかたちだったわけです。このviveは、「vivre」の接続法現在のかたちです。短いフレーズにするためにqueまでが省略されて、「倒置」になっているわけですね。

しかし例外はこのくらいで、残りの場合では「接続法」は「que以下で」使われることになります。ただし、que以下で必ず「接続法」が使われるとは限りません。もちろん、話し手が〈出来事の現実度〉を100パーセントと考えている場合、これは「直説法」を使えばいいわけだからです。

ここで四つの「法」を並べてみて、話し手の「態度=法(mode)」のちがいをまずは味わってみてください。例として[Melos-revient] という主語と動詞の組み合わせをとりあげてみましょう。

①<出来事>が現実ならば、「直説法=ニュース報道型」
  Melos est revenu.(メロスは戻ってきた[直説法複合過去])
  Melos reviendra.(メロスは戻ってくるだろう[直説法単純未来])

②<出来事>が空想ならば、「条件法=SF映画型」
  Melos reviendrait s’il était au Japon.(メロスは日本にいれば、戻ってくるのに[仮定法現在])

③<出来事>があたまのなかの世界ならば「接続法」
  Il faut que Melos revienne.(メロスは戻ってこなければならない[接続法現在])
  Je souhaite que Melos revienne.(メロスに戻ってきてほしい[接続法現在])
  Je suis heureux que Melos revienne.(メロスが戻ってきてくれると嬉しい[接続法現在])

④<出来事>が現実にしたければ「命令法」
  (Melosに対して)Reviens!(戻ってこい!)

実は英語にもあった「接続法」

じつは英語にも「接続法」のような文法があります。しかし、couldやwouldといった助動詞に頼りがちな英語では、わざわざあたらしく動詞の活用を覚える必要がないので、なかなか意識することはありませんが。

覚えていますか? 大学受験の英語で出されるこんな構文……

  We desire that he visit us more often.
  (彼がもっと頻繁に来たらいいのに)

  It is essential that the rule be changed.
  (規則を変えることが不可欠だ)

  It is requested that the papers be made ready within a few days.
  (書類は数日のうちに用意されたし)

文法的には「仮定法現在」と説明されたり、shouldやshallの省略形と見なされたりして、不思議だなと思いませんでしたか? でも、本当に大事なことは命令形と同じ「原形」が用いられているということですね。

しかしフランス語には「助動詞」なるものがほとんどないために、動詞の活用をいわば「助動詞代わり」にするわけです。それが「接続法」の活用というわけ。上の英語は、たとえばフランス語ではこんなかたちになります。太字部分が「接続法」のかたち、ちょっと特殊のかたちですよね。

  Nous souhaitons qu’il nous rende visite plus souvent.
  (彼がもっと頻繁に来たらいいのに)

  Il est essentiel que la règle soit modifiée.
  (規則を変えることが不可欠だ)

  Il est demandé que les documents soient prêts dans les jours qui suivent.  
  (書類は数日のうちに用意されたし)

これは英語でもフランス語でも同じですが、現在形(直説法)は、〈出来事が〉「現実のもの」になってはじめて活用が起こるんです。逆にいえば、まだ現実になっていないものに対しては、動詞を「生まれたままの状態=原形」で用いる。

  Go to bed ! (寝なさい!)

  Be a good boy !(いい子にしてなさい!)

  May the Force be with you !(フォースが共にあらんことを!)

原形(不定法)というのは、まだ人間の頭で操作を受けていないナマのかたち、つまり「動詞の赤ちゃん」なんですよね。しかし、赤ちゃんの大泣きと同様に、これは他人に対して問答無用の力を発揮します。それが、英語でもフランス語でも「現在形」が「命令形」に転用される理由です。

さて、これらをフランス語にすると、どうなるでしょうか? 上でも書いたとおり、avoir, être, savoir, vouloirについては「接続法=命令法」なんですよね。

  Allez vous coucher ! 

     Sois un bon garçon !

     Que la Force soit avec toi !

ここまで読んでいただいた方は、どうしてフランス語の命令形の一部で「接続法」と同じかたちを使うのか、おわかりになっていただけるはずです。どちらもまだ現実化していない〈出来事〉をなんとか〈現実〉にしよう、という気持ちが働いているからですね。

「接続法」で大事なのはqueまでの情報(que以下は二次的!)

ここまでで「接続法」のポイントは、あらかた説明してきましたが、最後にもうひとつ超重要なことをお伝えします。それは、queの前と後では「前」のほうが重要な情報である、ということです。

よく教科書などでは、「接続法」は主観的な内容を示すのに使う、なーんて書いてあるんですが(フランス人もそう思っていることが多いのですが)、しかしそれでは以下のような文章で、どうして「接続法」を使わないのか、説明ができなくなってしまいます。

  Je pense que Melos va revenir.(メロスは戻ってくると思う

  J’ai le sentiment que Melos va revenir.(メロスは戻って来る気がする

  J’ai eu l’intuition que Melos revenait.(メロスが戻って来ると直観した

「気がする」とか「直観した」とか、超主観ですよね。でも「接続法」は使いません。ということは、「接続法=主観」という等式は成り立たないということです。こんないい加減な説明をしている教科書は、捨ててしまいましょう!

それよりもずっとずっと大事なことがあります。

はい、これです。「que」があるということは、「主語・動詞」の組み合わせが 「ふたつ」あるということですよね。そのどちらに比重があるかが、いちばん大事なことなのです!

  J’ai le sentiment que Melos va revenir.(メロスは戻って来る気がする

  J’ai eu l’intuition que Melos revenait.(メロスが戻って来ると直観した

  こういのって「主観」だと思いますが、斜線で消したところは必ずしも必要ではありませんよね。「メロスは戻ってくる!」って大声を張り上げて日本語でいったとき、それは確実ではないけれど、願望が強すぎて、ナレーション目線で低い声「メロスは戻ってくる。」と同じ文章になってます。それと同じことが、このフランス語でも起こっているわけです。

以上の例は、主節(queより前)の内容の重要度が低いため、直説法を用いるのがふつうです。対して、以下の例では、主節の内容の重要度のほうが高いため、接続法を用います。

  Il faut que Melos revienne.
  (メロスは戻ってこなければならない)

  Je souhaite que Melos revienne.
  (メロスに戻ってきてほしい)

  Je suis heureux que Melos revienne.
  (メロスが戻ってきてくれると嬉しい)

これは、[Melos-revient]というque以下の<出来事>よりも、それに対する話し手の感情のほうが重要です。queの前までをさっきみたいに削ってしまったら、その気持ちの部分がなくなって、ぜんぜん違う意味内容になってしまいます。直説法と接続法の根本的なちがいは、ここにあるのですね。

まとめ

この記事を読んでいただければ、フランス語の「接続法」がどんなときに使われるのか、一目瞭然ですね。直説法、そして命令法と「接している」ので、比べてみるとよくわかります。最後にひとつ確認のためのクイズ。

 a.   J’ai trouvé un studio qui est équipé de la connexion Wifi.

  b.  Je cherche un studio qui soit équipé de la connexion Wifi.

このふたつの文章、似ていますが、どうしてaが直説法なのか、わかりますよね。前半で「見つけた」といっているわけですから、現実にwifiがついた部屋が存在するわけです。それは話し手の「あたま」の外側にもある。

でも、まだ部屋が見つかってないbでは、まだ「wifiつきの部屋」は、「あたまのなか」にしかありません。見つかるかどうかわらないけど、という不確実性がque以下で接続法を使わせているわけですが、もちろん探している時点でも、確実にそういう部屋があるのを知っていれば、直説法を使うことができます。

上の概要さえつかんでしまえば、あとは活用のポイントと接続法がよく使われるパターンを覚えればいいだけです! これがいろいろあって、ちょっと面倒なんですけどね!

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